真っ暗な日、もう文明社会では無いのかも知れない。山の奥深くにいても遙か遠くの町の明かりが山のずっと向こうの地平あたりを、ぼーっと照らし出す。災害で広範囲が停電になり人の住む環境が破壊されてしまったようなときに、皮肉にも真っ暗な日が訪れる。全てを失い、ただ自分だけが取り残され、何も見ることが出来ないときに何を見る。そんなときは空を見上げる。星が綺麗だろう。見たことのないような満天の星が同じ夜空を見上げた人々の記憶に残るだろう。星はいつも同じ間隔で輝いて、星同士決して交わることがなく位置を変えずに回っている。季節毎に必ずそこにある星座を見ては巡らす思いがある。地球を取り巻く惑星は重なり合ったり遠ざかったり、夜空を見ていればそれが分かる。そんなことを思いながら山の夜に空を見上げて過ごしたら、星が人に思えてくる。その人と過ごした日々。どうしても思い出を辿りたくなる。決して触れることのできないものだから、何でも呟いて、見られる自分ではなく見る自分に会える。