何もせずただ雲を眺めてボーッとしていても、誰からも何も言われない、いやそれが自然な情景に思われる山が好き。風が吹けば花のように体が自然と揺れる、陽射しは暑いがそれを遮ろうとは思わない。痺れるような冷たさの流れに足を浸し、ひたひたと岩盤を歩いてきた。新緑の谷間の空は緑色、葉を透けて通る陽射しはやわらかに目を癒やす。大滝を超えて鮮烈な一滴の水が涸れた源流の先には、獣さえ歩くのが難儀だろうネマガリダケの密藪。嬉々として藪に向かい全身でかき分けて行く、これが沢登りの醍醐味と思えるようになるには時が必要だった。密藪の先に木々のない広々とした風景が確かに広がっている。山上の楽園がどうして尾根の上にあるかは知らないが、あの空の広さを忘れない。節目毎にいつもその先の10年を考えてきた、来年古希を控えたその後は最後の節目になるのだろうか、山登りを模索する日々である。