今夏は久しぶりに花を目的の山登りに出かけた。50有余年にも及ぶ山登りのきっかけは、高山植物の魅力に惹かれて山に入ったこと。その最大の魅力は固有種。気象や地形、地質、その山独特の環境が織りなす個性は山自体の魅力でもあるが、そこに育つ固有の花は極限られた範囲でしか生きられない奇跡の生命なのである。北海道にはエゾ・・・と言う花が多い。北海道にしか咲かない固有種ではあるが、その中でも更に限られた環境で咲く花がある。日高山脈南端のアポイ岳、道南の大平山(おおびらやま)等。ここでは花自体の紹介は控えるが私の憧れの花たちである。関東では蛇紋岩の至仏山や谷川岳に咲くオゼソウ、ホソバヒナウスユキソウ、天塩山地と本土ではここだけ。大平山にはオオビラウスユキソウ、これは会いたい。死ぬ前に一度は会いたい。 固有種を育てる環境、人の個性も環境が作るもの。とかく社会や組織や集団には個性を拒むルールや規則が多い。山のクラブもしかり、そこには安全登山という足かせがある。ジレンマに苛まれながらも、個を阻害しない自由な雰囲気を大切にしてきた。個性は生まれつきの特性ではない。ネットで集まる、その場限りの集団の中では決して育まれない個性が、豊かに表現できる雰囲気、環境でありたい。