秋の登山道は色模様のカーテン。息を切らせて足元から見上げれば極楽浄土の曼荼羅のよう。自分の存在はいらない、足跡も記録も趣味も独りよがりになるから。人の記憶の中にこそ残れば幸せ。秋の夕陽に追われて振り返れば、彼方の空の色。空の色は地上を染めてゆく、山上の池塘も山里の川も海も手のひらですくった小さな溜まりも、鏡のように、みんな秋を写して空の色。秋こそ透明な空気に色が冴えてゆく。人は気持ちを表現するのに声色を変える。声色は無限で、感情を具現化する。木々は色でそれを伝えているように想う。冬を迎える木々の必死な姿が私には見える。若い人たちと技巧やメカニックな面を比べたら私なんかは足元にも及ばない。古希を過ぎて、おぼつかない足をいたわりながら尚山登りを探求しているのは、四季折々千差万別な姿を見せてくれる自然と対峙する精神の世界であり、人と共に歩く道である。