その先はどうなっているのだろう。そんな探求心をくすぐる谷が西上州にはある。谷の中に岩峰が林立して、その隙間を沢が曲がりくねって続いている。林道が谷を囲むように付けられているが、険しさ故に谷間には手が入らない。初めて地形図を開いたときの驚きを今も忘れない。両手で囲める程の小さな空間に夢が詰まっていた。地形図で水線を辿ればその異様さが分かり、すっきりとは引けない水線が知らぬ間に岩記号に消えていったりする。一ノ沢二ノ沢、自分で勝手に名付けて枝分かれする水線を一つ一つ登って、気がつけば十数年が経ってしまった。決して綺麗な沢ではない、谷間は暗く、いつも濡れたような岩肌はぬめって冷たいが、仰ぎ見る岩峰が陽の色に輝き、明るい世界を示してくれる。課題を残したまま時が経ち、遠ざかってしまった谷を思い起こさせたのは、今年も沢初めを迎えた神流川の二つ上流の沢。上流の谷はどんなだろう、そんな探究心に至らなかった当時を振り返りながら、ネット情報のない時代に地図を広げては未知の谷間を思い描いていた頃の幸せを大切に思う。