私にとっては振り返る間もない、あっという間の一年であった。世界一平和な社会で暮らしながらも、世の中の進歩変動の激しさに流され、暑さ寒さを肌で感じながらも季節の急な移り変わりに戸惑う。山の中で知る五感の全ては年々衰えながら変わって行くのに、数十年前のたたずまいと全く変わらない山の風景に、己の卑小さを嘆く。憧れをまだ失ってはいないか、と問いかける。先に結論を求め、そこに向かって歩く脚本のある生き方には憧れやロマンは存在しない。暗く凍てつく朝、何を好んでこの世界に遊ぶのだろう。すぐそこに温もりの寝床と安らぎの時間があるのに。数十年もの間、繰り返す自問に答えを出せることはない。ただ楽しく温もりと安らぎに満ちた1日を過ごせた、というレベルを越えなくては、いつかは立ち止まり、空の自分に嘆くだろう。振り返る1年、山を共にした人の名を忘れまい。それぞれの生活の中で互いに助け合って暮らしてゆくわけではないが、そこに行けば笑顔で迎えてくれる仲間がいつも居ることを忘れまい。