山から吹く風は既に小さな雪の結晶で満ちている。冷たいとはしゃげる子どもの心には、貧しさもや空しさと言う文字も言葉さえもない。町から吹く風はまだぬくもりが残っている。天空に満点の星空を仰ぎ、眼下にまばゆい灯火の連なりを眺めれば、自ずと自分のあり方が分かる。葉の落ちた雑木林にムラサキシキブの紫の実。花言葉は「上品」。岩峰から眺める風景の広がりは普段の自分には無いおおらかな気持ちを思いおこさせる。晩秋の陽の眼差しは強かったり弱かったり。そんな日にさえ、山登りは苦しさや緊張を忘れさせずに何かを与えてくれる。山を愛するのではない、山登りを愛するのだ。人を愛するのではなく、その人の生き方を愛するのと同じに。大きく開いた星穴、自分もあんな風に風穴を開けたら、さぞ愉しい人生だろうに。